プロジェクトの炎上防止に向けたクライアントの期待値把握

コンサルタントとして様々なプロジェクトを担当していると、残念ながら中には上手くいかないプロジェクトも存在します。いわゆる「炎上案件」と呼ばれるものですね。プロジェクトが炎上すると「火消し」に多くのリソースが必要となりますし、クライアントからの信頼低下や、ひいては案件の失注にもつながります。いかに炎上を避けるかがプロジェクトマネージャーの腕の見せ所となります。

プロジェクト炎上の原因

では、何が原因でプロジェクトが炎上するのでしょうか?外資系コンサルタントの山口周さんは、その原因を以下のように分析されています。

プロジェクトが「成功する」とか「失敗する」というのは、どういうことなのでしょうか?結論から言えば、関係者の期待値より高い結果に終われば「成功」であり、関係者の期待値より低い結果に終われば「失敗」なのです。(中略)ビジネスにおけるプロジェクトでは費用対効果が必ず問われます。たとえ90点であっても、かけた費用に対する期待値が80点であれば、それは大成功といっていいわけです。

外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント 山口周著

私の経験からも、クライアントの期待値とアウトプットの品質に差がある場合にプロジェクトが炎上します。アウトプットの品質が微妙でもクライアントが満足しているプロジェクトもあれば、優秀なメンバーをアサインして懸命に作業しても評価が低いプロジェクトもあります。アウトプットの品質は関係なく、クライアントの期待値を満たすことが重要であると分かります。

炎上するプロジェクトをもう少し細かく分解すると、以下の3つのパターンに分類することができます。

期待値を把握できていない

1つ目はクライアントの期待値を把握できていないパターンです。そもそもゴールが分からなければ、ゴールにたどり着けるわけはありません。例えば、事前のヒアリングが不十分だった場合や、ヒアリングした担当者とプロジェクトオーナーの期待値が異なる場合などが考えられます。

ヒアリング漏れの対応策としては、ヒアリング項目を事前に準備しておくことや、複数人でヒアリングを実施し、ヒアリング後に認識合わせを行うこと等が挙げられます。また、ヒアリング内容を資料にまとめ、次回MTGでクライアントに確認することで、認識のずれを早期に発見することができます。

ヒアリングに慣れてきた頃に陥りがちな罠として、他プロジェクトと同じ内容だと思い込み、異同点を見逃してしまうことがあります。例えば、あるクライアントの業務改善プロジェクトでは、当初は一般的な業務改善のアプローチ(現状把握→打ち手立案・実行)を予定していました。しかし、よくよく話を聞いてみると、現状把握は既に別コンサルが実施済で、クライアントは打ち手立案・実行のみを期待していることが判明しました。これは他プロジェクトの経験が足かせとなり、クライアントの期待値を大きく読み間違えてしまったケースと言えます。

リソースが不足している

2つ目は、クライアントがやりたいことは分かっていても、それを実施する為のリソース(時間・人・スキル等)が不足しているパターンです。プロジェクト獲得の為に無理な提案を行った場合や、プロジェクト開始後にスコープが膨らんだ場合などに発生します。

この場合の対応策は、クライアントの期待値を下げるか、リソースを増やすかの二択になります。期待値を下げるためには、「約束を少なく、アウトプットは多く」を意識することが必要です。クライアントから評価されたいと思うと、依頼されたことを何でも引き受けてしまいがちですが、期待値を上げすぎると後で自分たちが苦労します。できるだけ約束は少なくして期待値を下げ、実際には最大限のアウトプットを出すように努力したほうが、結果的にクライアントの評価も高くなります。

また、リソースについては、プロジェクト序盤は「ちょっと人多すぎかな?」と思うくらいのチーム体制を準備しておきましょう。プロジェクト序盤はゆったりしていても、締め切りが近づくにつれて忙しくなるものです。稼働のピークに合わせてチーム体制を構築しておけば、想定よりも多少工数が膨らんだとしても対処できます。

先ほどの書籍では、リソース配分について以下のように述べています。経験豊富なコンサルタントでも1.5倍の見積りを出しているのですから、我々も最低1.5倍の見積りをしておくべきでしょう。

筆者の場合、基本的に「ギリギリこれだけあれば大丈夫だろう」という見積もりに対して、だいたい1.5倍程度を提示します。たとえば「期間」に関しては「四カ月で何とかなる」ということであれば「六カ月は必要です」と言いますし、「リソース」に関しては、四人のメンバーと予算一千万円が必要だと見積もれば、「六人のメンバーと一千五百万の予算をください。でなければ無理です」とまずは言います。

外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント 山口周著

期待値とズレた作業をしてしまう

最後は、クライアントの期待値も把握し、リソースも十分あるにも関わらず、クライアントの期待値とズレたアウトプットを出してしまうパターンです。そんなことあるのか、と思われるかもしれませんが、意外とこのパターンも多いです。

例えば、クライアントのマーケティング戦略を立案するプロジェクトでは、既存のマーケティング戦略がかなり良くできており、これ以上深堀りしても価値が出せないことが判明しました。そこで急遽方針を転換して、戦略ではなく実行にフォーカスし、各種マーケティング施策を実施しました。これらの施策について現場担当者から高い評価を頂きましたが、プロジェクトオーナーに結果を報告したところ、オーナーは施策の実行ではなく既存のマーケティング戦略の第三者評価を求めていたことが判明しました。

そこから急いでマーケティング戦略の評価を行い、何とかプロジェクトを終わらせることができましたが、今でも思い出すとドキドキします(笑)。いくら途中で筋の良さそうな方向を見つけたとしても、まずは最初のお題に100%答え、クライアントの期待値を満たすことが重要です。

クライアントの期待値を意識し続ける

ここまで、プロジェクトが炎上する原因と、期待値がずれる3つのパターンを説明しました。これらのパターンを意識することで、炎上リスクをある程度低減することが可能と考えています。

ただし、一つとして同じプロジェクトがないため、いくら気を付けていてもプロジェクトが炎上する可能性は常に存在します。「自分はクライアントの期待値を理解できているか?」「クライアントの期待値に応えられているか?」という問いを常に投げかけながら、危機感を持ってプロジェクトを進める必要があります。

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