社内ITリテラシー向上に向けた人材育成計画の策定

2019年7月30日

マネジャーのやるべきことは部下の教育とモチベーションの向上だ。他にマネジャーがなすべきことはない。
HIGH OUTPUT MANAGEMENT アンドリュー・S・グローブ著

事業推進のためには、もっとも重要な資源である人材のパフォーマンスを最大化させることが求められます。パフォーマンス向上のために有効な手段として、業務に必要なスキルの継続的な教育があります。特に、国内の労働人口が減少し、IT活用による業務効率化が求められている現状では、ITリテラシー教育の重要性が高まっています。本記事では、ITSS (ITスキル標準・後述) を元に、人材育成計画の策定手順について解説します。

ITSSとは

ITSSは、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標のことで、IT関連の教育・訓練を行う際に有用な「ものさし」となります。経済産業省所管の組織であるIPA (情報処理推進機構) が作成しているため信頼性が高く、IT研修の検討時によく参照されます。ITSSは関連資料が充実していることも特徴で、スキルの定義だけでなく、導入方法についても解説されています。

人材育成計画策定の流れ

ITSSの導入プロセスを下図に示します。これらのステップを順番に実施することで、ビジネス目標にマッチした人材育成計画を立てることができます。ITSSを使わずに独自のスキルセットを定義する場合でも、基本的なプロセスは変わりません。
ITスキル標準導入プロセス
出所:ITスキル標準はやわかり ー人材育成への活用 ー

Step1: 要求分析

自社の目標・戦略・計画から、目標達成のために必要な人材要件をまとめます。中期経営計画やアニュアルレポート等の資料を読んで自社のIT・デジタル戦略を確認したり、ヒアリングによりマネージャ層の見解を調べます。例えば、デジタル戦略として新規事業の構築が重視されている場合、要求として「最新のデジタル知見の調査」や「プロジェクトの立案・推進」などが想定されます。

Step2: 活動領域分析

企画・開発・運用などのITに関係する活動のうち、自社の人材が担当する領域を確認します。ITを専門としている会社でない限り、企画などの上流工程を自社で担当し、運用などの下流工程は外注することが多くなります。活動領域を考える際には、ITSSが提供している一般的な職種の活動領域が参考になります(下図)。
IT投資の局面と活動領域
出所:ITスキル標準V3 2011 2部:キャリア編

Step3: 機能分析

Step1・2で作成した要求モデル・活動領域を元に、自社でどのような機能が必要か?その機能を担うのはどの部署か?を考えます。例えば、「知見調査」は調査部が、「プロジェクト立案」はデジタル推進部が担当するといった具合です。なお一般的には、既存のITの保守・運用 (守りのIT) と新規デジタル事業の開発 (攻めのIT) は別の組織が担当することが望ましいとされています。組織体制については別記事にまとめる予定です。

Step4: スキルセット構築

Step3で定義した機能を実現するために必要なスキルセットを定義します。具体的には、各機能のサブセットとして必要なスキルを定義していきます。例えば「プロジェクト立案」という機能については、「業務上の課題を分析・抽出できる」などのスキルが求められます。

Step5: 人材モデル策定

ここまでのStepで、組織ごとに必要な機能・スキルのマトリクスが整理できました。組織ごとの人材育成計画を立てるだけであれば、このステップを飛ばしてギャップ分析に行ってもよいですが、組織ではなく人材ごとに求められるスキルを整理する場合は、コンサルタント・営業といった役割を定義し、必要なスキルを洗い出します。

Step6: 現状把握・ギャップ分析

現状のスキルを把握し、理想とのギャップがどこにあるのかを確認します。

Step7: 人材育成計画策定

AsIsとToBeのギャップを埋めるために必要な人材育成計画を策定します。計画には人材育成の体制・育成フロー・スケジュールなどを盛り込みます。育成手段は講義・ワークショップ・情報発信など複数考えられるため、目的に応じた手段を選択することが必要です。また、短期的には育成ではなくコンサルタント等の外部リソース活用が有効なケースもあります。

まとめ

本記事では、ITSSに従った人材育成計画策定プロセスを確認しました。いきなり研修計画を考えるのではなく、まずは会社のIT戦略から人材要件に落とし込むことが重要です。また、ステップ全てを完璧にやると大変ですので、このプロセスに拘りすぎず、現場に応じた適切な作業設計を行うことが必要でしょう。

参考文献

  • ITスキル標準はやわかり ー人材育成への活用―
  • ITスキル標準活用の手引き ―企業導入の考え方―
  • ITスキル標準V3 2011